輝く!文化人vol.7 しじみアーティスト なかじままさえさん

こんにちは、山家、川田、今井です。今回はしじみアーティストのなかじままさえさんにリモートで取材をしてきました。

始めたきっかけ、生活の変化

山家 しじみアートを始めたきっかけを教えてもらえますか?

なかじままさえさん(以下なかじまさん) 
しじみの根付(着物の帯に挟み込むアクセサリー)作りを小学生くらいのころに祖母から暮らしの中の手仕事として教わりました。祖母が暇さえあればずっと手を動かしていた人で見よう見まねで教わっていたことが私の中の原風景で残っているのです。私は島根県松江市で生まれ育って短大に進学するために奈良に行ったときに建築やインテリアデザインを勉強して就職は東京で内装会社に就職したのですが、平面図は上手くかけるのですが、立面だとどうして苦手で苦労しました。後に木工職人の夫と結婚したのですが、とにかく時間がなくて家事や子育と両立できる仕事を探して行かなくてはならない、家事や育児と両立ができて自分が得意なものってなんだろうと思った時に子供のころ好きだったイラストを勉強しようと思い勉強し直しました。
勉強して個展やグループ展で発表していたり編集プロダクションに努める友人から仕事をもらっていたのですが、数年前、あるイベントに参加した時にポストカードを出展していたときに、故郷とのご縁が切れていく、故郷の伝統や文化、子供のころに受け継いだものを守っていきたいと思うようになりました。何かないかと思った時に祖母から受け継いだしじみの根付を思い出して、しじみで何か作ってイラストと一緒に並べてみようと思い、オブジェを作ってみたら「面白い」と言っていただきました。それから数年後、東京都小金井市のマルシェにイラストを出展した時にイラストを一人で商品化をすることに限界を感じて、またしじみのオブジェを作ったら「アクセサリーを作ってみたら面白いのでは」と声をかけてもらって、本腰を入れて作ってみようと思いました。

川田 イラストを描いていた頃としじみで作品を作っている今で何か生活に変化はありますか?

なかじまさん 結果的によかったことが、しじみアートは隙間の時間でできることです。私には息子が二人いるのですが、長男が中学一年生の時に学校になじめず引きこもってしまったりしていて、検査してもらったら発達障害だとわかってその時に次男も検査したら次男も発達障害だとわかって、そこから福祉施設や医療機関を家事や子育てしながらあちこち駆け回る生活が始まりました。イラスト制作はまとまった時間がどうしても必要でどうしても長い時間割かなくてはいけないのですが、しじみアートの場合は子どもの学校から施設まで送り届けるまでの隙間時間や子どもを待っている間に喫茶店やファミレスで少し手を動かすだけでできるので、精神的にも楽に自分の世界を表現できるし、子育てとの両立もできることです。
マルシェで出展した時にたくさん声をかけてもらって多摩地区のイベントに出させてもらったり、ワークショップや日本橋の保存会とコラボさせてもらって限定しじみアートを作らせてもらったり、故郷島根の観光地の雑貨屋さんや資料館にも出させてもらっています。最初はしじみは自分で食べて貝殻を集めていたのですが、松江市の加工会社さんに廃棄される貝殻を譲っていただいています。

活動のコンセプト、ワークショップ

今井 活動のコンセプトはなんですか?

なかじまさん 二枚貝には良いご縁を結ぶといわれていてその貝が縁結びの神様である出雲大社のお膝元で取れているので、国や国、文化や文化、人と人をしじみを使って結んでいきたいです。インドのサリーの端につけるザリテープや、パキスタンのラリーキルトを使ったり、世界の手仕事を合わせてみたら今面白いと思ってやっています。日本の着物に付き合われる久留米絣や漆作家さんとコラボして漆を使った作品を作っています。色々な布と合わせて作るのが今は楽しいです。

今井 しじみアートに出会っていなかったら何をしていると思いますか?

なかじまさん 絵は描いていると思います。あとゆくゆくはやってみたいことがあって、自分だけで作るのではなくてたくさんの人と集まって場づくりしたいと思っています。子どもが発達障害で、同じ境遇の子育てが孤育てになってしまっているお母さんは少なくないと思います。そういう人たちが子供を見守りながら手を動かして、無理なくおしゃべりしながら集まれる、大人も子どもも楽しい場所を作りたいです。
昨年はコロナウイルスの感染拡大でイベントがなかったのですが、放送局との合同企画でデイサービス向けの和紙を使ったワークショップをオンラインで挑戦しました。

山家 ワークショップにはどんな人が集まるのですか?

なかじまさん 子どもから大人集まってくれます。親子ワークショップや大人のワークショップを古民家カフェや公民館のイベントに呼んでもらいました。子どもさんにとっては初めての針仕事で、それがしじみを使うというのが新鮮だったと思います。

針仕事を家庭科の授業以外でする機会がない、親御さんもお忙しいので中々子どもさんのために時間を作ってあげられない中で、針の持ち方からスタートして、ひとつひとつ丁寧にワークショップを進めていきます。大人向けワークショップはネックレスのように子供向けとは少しレベルが上がったものを2時間かけてじっくり作ります。

山家 しじみアートのつくり方はおばあ様のつくり方をベースにしているのですね

なかじまさん 
祖母から教えてもらったものは日本全国の皆さんが作っていたと思っていて意外にも日本全国で見ることができたのです。でも、私のつくり方は少し特殊みたいで、出展や委託販売してもらった時に、見たことがないと驚かれることが多いです。おそらくしじみアーティストを名乗っているのは私だけかもしれません。
どんな材料を使って作品を作ろうか研究が面白くて、先日医療器具のカテーテルを使ってしじみのビーズつくりをやってみました。伸びるタイプのひもを使ってしじみをビーズのように使ってみたかったのです。そのビーズ化するための穴をどうやって作ろうと思っていろいろ試していきついたのがカテーテルでした。
前はフェルトだったのですが蔵前で動物の皮を買って使ってみました。既存のものではなくて自然のものをどのようにパーツにしているかという発想なので、あちこち街を歩いて色々なものを見て探しています。

活動でよかったこと、そして大変だったこと

今井 この活動を通して大変だったことはありますか?

なかじまさん 
以前は二枚貝が繋がっている作品を中心に作っていたのですが、その時に材料となる貝がバラバラで届いていたのです。人間の指紋がみんな違うように貝もそれぞれ個性があるので貝を合わせる所から始まっていました。表と裏を見てそれがぴったり合うと「かちっ」と音がするので、リアル神経衰弱をしていました。その期間はしじみと会話していましたね(笑)
あとは穴あけがすごく大変でした。穴をあけるときにどうしても割れてしまうのですよ。プラモデルをやっている方は水に沈めて穴をあけているみたいでそれを試したり、ドリルの回転数を変えてみたり、いろいろ工夫しました。
下処理は凄く時間がかかりますよ。ひとつひとつ歯ブラシを使って貝をきれいにして、漂白剤で消毒して、天日干しして、そこから電動やすりをかけてそこで初めて作品作りできるので大変です。

川田 この活動でよかったことはなんですか?

なかじまさん 
たくさんの方に興味を持ってもらって、すごく面白がってもらえることですね。「見たことない!」と言ってもらえるので、しじみを通じて人とのつながりや出会いが加速していきました。「職場の同僚にプレゼントしたらその人の結婚が決まりました!」という話を聞くと嬉しいですね。二枚貝に人と人を合わせる不思議な力があるのかもしれませんね。この活動をしていなかったら出会えていない人がたくさんあったりするので楽しいです。小金井市の農家さんと企画したマルシェでそこに手書きの松江城を描いた作品を出したりして、地元農家さんや行政の方と繋がったり、日本橋で日本酒の利き酒のイベントにも出させてもらってそこでもたくさんの人と繋がれたり、生活がすごく豊かになりました。

海外での活動

今井 海外での活動はあるのですか?

なかじまさん 日本国内だけでなく海外のイベントにも参加させてもらって、パリのイベントに出展したのですが、そもそもしじみは日本海近辺で取れるものであって、海外では馴染みのないものなので、しじみとは何かという説明からしました。フランスの方々はそれぞれの文化やバックグラウンドを語り合いたい人たちが多いので、フランス語のテキストを作ったのですが、中々読んでもらえなくて、通訳さんを通して語り合いました。面白かったのが声をかけてくれた人の中にフランスの北西部ブルターニュ地方の方がいらっしゃって、島根県も日本の北西部、日照時間が短い、自然が豊富、そばや小さな貝を食べるという数多くの共通点があって、人柄も似ていて行きたいなと思っています。

潜在的海女さんとは…?

川田 ホームページに書かれている「あちらとこちら。あなたと私。今日と明日。ひらひら飛んで互いをつなぐ、小さな小さな力になれますように。」にこめられた想いを訊きたいです。

なかじまさん 
私自身「繋がる」という言葉に想いがあって、作品を作っているときに瞑想というか潜在意識や集合的無意識の「人類みんななんとなく繋がっている海に潜っている」という感覚があって、それを私は『潜在的海女さん』と呼んでいて、人は心理的に深い所で繋がる海にダイブをしている。そこで人と繋がっている感覚で創作活動をしていて、みんなバラバラで人種も違うし考え方や価値観は違うけど、根本的にあるほっとするや安心するとか、分かり合えるものは一緒だよね、人間のベースになる部分で人と繋がりたいという想いで活動しています。
それと逆にみんな違う、個性がある。そのひとりひとりの違いを楽しむ、そういった繋がりもあって、ふたつの繋がり、代表作にちょうちょのブローチがあって、ちょうちょもまた繋がるという意味があります。違いを楽しみながら繋がる、ひらひら舞うように、人が繋がるというところと、やっぱり一緒だねという繋がり、どちらの繋がりも大切にしたいなと思ってこの言葉にしました。このふたつの繋がりが二枚貝のように合わさっていますね。

創作活動には祈りがあって、私が少しでも社会と繋がっていたいという祈りと子どもたちへの祈りもあります。家事や子育てにはゴールがあるというより、毎日毎日が繰り返しだけど今日やっていることが明日への成長に繋がっていく、そんな感覚の繋がりも表現でいたらいいなと思っています。

今後の夢、地元の魅力とは?

山家 今後の夢や目標を教えてください

なかじまさん 
いずれは島根と東京の二拠点生活です。松江で子育て中のお母さん始めたくさんの人が集まって、手仕事をしながら子どもも遊べる、それでいて大人が楽しめる姿を子どもが見られる。そんな場所を作りたいですね。場づくりのきっかけになれたらいいなと思います。
もうひとつは地域の産業を盛り上げるために使っていただけたらなと思います。

川田 地元の魅力や地元への想いを訊かせてください。

なかじまさん 
地元に帰って思うのは宍道湖です。宍道湖の隣に中海という貯水湖があって、そこから大橋川という川があって、さらに松江城を中心とする城下町で構成されていて、お堀が張り巡らされている所謂「水の都」と言われている街なのですが、住んでいた時は何も感じていなかったのですが、地元を離れて生活が苦しくなって余裕がなくなったときに地元に帰って水を見ていると心が潤うのです。気持ちが水で潤う感覚というのでしょうか、時間の流れもゆったりしていて、地元の人たちものんびりしているのだけれど生活の中に文化がしっかりしていて、松江のお殿様にお茶の名人がいらっしゃって、その文化が残っていて、お茶の時間にはしっかりとお茶をする。というように生活の中の文化を気負わずに楽しんでいる。そんなところが魅力です。

なかじままさえさんのホームページ→http://nakajimamasae.com/

感想

初めてお会いしたときに、私もしじみを使って作品を作っているということにとても驚きました。そこから実際に活動や地元への想いを訊いて、貝と貝が合わさっていくように人人が合わさっていく、まるでカルタのようななかじまさんがとても魅力的に感じました。地元を離れたからこそ見られる地元の良さ、故郷への想いを感じることができた取材でした。私自身もとくと見よ始めたくさんの活動で生まれ育った地域に何かできないかと考えることがあるのですが、いずれは何か返すことができたならと日々思います(山家)

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